●柔らかな頬
 

今回の“My Favorite”は、第121回(平成11年上半期)直木賞受賞作の『柔らかな頬』(桐野夏生・講談社)です。

先日、それまで読んでいた本が終わったので、行きつけの本屋に立ち寄って見たところ、この作品が文庫になっていたので、次に読む予定だった本までの“つなぎ”として購入したのですが、思っていた以上に面白く、一気に上下巻2冊を3日で読んでしまいました。

桐野夏生という作家は読んだことが無かったのですが、『 OUT』という作品の書評などを読み、もっとドロドロした犯罪小説を書く作家かと思っていました。
しかしこの『柔らかな頬』は読み初めは題名の通り柔らかな出だしで、恋愛文学的な内容なのかと思ってしまいました。ハッキリ言って当初は「失敗したかな?」と思わせるほど単調な印象だったのですが、読み進む内にジワジワと引き込まれて行き、後半には夢中になっていました。

特にスリルとかミステリーとか娯楽的な要素は無いのですが、ここまで読ませてしまうというのは、やはり作者の「読ませる力」「文章の力」なのだなと思いましたし、さすが直木賞受賞作だなと思いました。

決して軽薄ではなく、重いテーマを持った作品なのに息苦しさを感じさせない、淡々とした、そして変化を持った、まさに「水の流れ」のような作品です。お勧めです。

 

 

1/May/2005

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